家族が亡くなり、不動産を相続することになったとき、多くの方が「何から手を付けたらよいかわからない」と感じるのではないでしょうか。2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内に手続きを完了しなければ10万円以下の過料が科される可能性があります。この記事では、不動産相続の全体的な流れから必要書類、費用まで、初心者の方にもわかりやすく解説いたします。複雑に見える相続手続きも、正しい順序で進めれば確実に完了できますので、ぜひ参考にしてください。
【2024年4月義務化】家の相続手続き、何から始める?全体の流れを解説
2024年4月から相続登記が義務化され、不動産を相続した場合は3年以内に登記申請を行うことが法的に必要となりました。まず全体像を把握することで、各手続きの意味や重要性が理解できるようになります。
不動産の相続手続きは、大きく分けて6つのステップに分かれています。遺言書の確認から始まり、相続人の確定、財産調査、遺産分割協議、相続登記、そして相続税の申告まで、それぞれに期限や注意点があります。
たとえば、相続放棄を検討する場合は死亡を知った日から3ヶ月以内、相続税の申告は死亡日から10ヶ月以内という厳格な期限が設けられています。これらの期限を逃すと、想定外の税負担や法的リスクを背負うことになりかねません。
期限はいつまで?時系列で見る不動産相続手続きの全ステップ
不動産相続には複数の手続きがあり、それぞれに異なる期限が設定されています。時系列で整理することで、どの手続きを優先すべきかが明確になり、スムーズな相続手続きが可能になります。
STEP1:遺言書の有無を確認する
相続手続きの最初のステップは、被相続人が遺言書を残していないかを確認することです。遺言書の有無によって、その後の手続きが大きく変わるためです。
確認すべき場所は主に3つあります。自宅の金庫や重要書類を保管している場所、公証役場での公正証書遺言の検索、そして法務局での自筆証書遺言保管制度の利用確認です。
たとえば、公正証書遺言がある場合は遺産分割協議が不要になることが多く、手続きが大幅に簡素化されます。一方、自筆証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要になります。
STEP2:相続人を確定させる(戸籍謄本の収集)
相続人の確定は、被相続人の出生から死亡まですべての戸籍謄本を収集することから始まります。これにより、法定相続人が誰なのかを正確に把握できます。
必要な戸籍謄本には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員の現在戸籍謄本、被相続人の住民票除票などがあります。
具体的には、被相続人が転居や結婚で本籍を移している場合、複数の市区町村から戸籍を取り寄せる必要があります。この作業は時間がかかることが多いため、早めに着手することが重要です。
STEP3:相続財産を調査する
相続財産の調査では、プラスの財産だけでなくマイナスの財産(借金)も含めてすべてを把握する必要があります。これにより、相続するか放棄するかの判断ができます。
不動産については、固定資産税納税通知書や登記事項証明書で確認します。その他の財産として、預貯金、株式、生命保険、借金、ローンなども調査対象です。
たとえば、一見価値のある不動産でも、借金の額が資産価値を上回っている場合は相続放棄を検討する必要があります。この判断は3ヶ月以内に行わなければならないため、迅速な財産調査が求められます。
STEP4:遺産分割協議を行い、協議書を作成する
遺産分割協議は、相続人全員で遺産をどのように分割するかを決める話し合いです。全員の合意が得られれば、遺産分割協議書を作成します。
協議書には、不動産の所在地や地番、相続人の氏名と住所、具体的な分割内容を明記します。また、相続人全員の署名と実印による押印が必要です。
具体的には、不動産を長男が相続し、その代わりに他の相続人には現金を支払うといった代償分割や、不動産を売却して現金を分割する換価分割などの方法があります。感情的にならず冷静に話し合うことが円満解決の鍵です。
STEP5:不動産の名義変更(相続登記)を申請する
相続登記は、不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続きで、2024年4月から義務化されました。法務局に必要書類を提出して申請します。
申請に必要な書類は多岐にわたりますが、主なものとして登記申請書、被相続人の戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、印鑑証明書、固定資産評価証明書などがあります。
たとえば、相続人が複数いる場合でも、遺産分割協議で決まった1人の名義に変更することが可能です。この手続きを怠ると10万円以下の過料が科される可能性があるため、必ず期限内に完了させましょう。
STEP6:相続税の申告・納付を行う
相続税の申告は、相続財産の合計額が基礎控除額を超える場合に必要になります。基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人数で計算されます。
申告期限は被相続人の死亡日から10ヶ月以内で、この期限を過ぎると延滞税や加算税が課される可能性があります。
具体的には、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円となります。相続財産がこの金額を超える場合は、税理士に相談して適切な申告を行うことをお勧めします。
【最重要】相続登記(不動産の名義変更)の手続きを徹底解説
相続登記は不動産相続手続きの中核となる重要な手続きです。2024年4月の義務化により、適切な知識と準備なしには法的リスクを負うことになりました。ここでは義務化の背景から具体的な手続き方法まで詳しく解説します。
なぜ必要?2024年4月から義務化された相続登記とは
相続登記とは、亡くなった方名義の不動産を相続人名義に変更する法務局での手続きのことです。従来は任意でしたが、所有者不明土地問題の解決を目的として義務化されました。
義務化により、相続により不動産を取得した相続人は、その事実を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないことになりました。正当な理由なく期限内に申請しない場合、10万円以下の過料の対象となります。
たとえば、2023年に父親が亡くなり実家を相続した場合、2026年4月までに相続登記を完了させる必要があります。この期限を守らないと、法的な制裁を受ける可能性があるため、早めの対応が不可欠です。
【チェックリスト付】相続登記の必要書類一覧
相続登記の申請には多くの書類が必要で、1つでも不足すると申請が受理されません。事前にチェックリストを作成し、漏れなく準備することが重要です。

具体的には、被相続人が生前に本籍を移していた場合、すべての本籍地から戸籍謄本を取得する必要があります。この作業は時間がかかるため、相続開始後すぐに着手することをお勧めします。
自分でやる?司法書士に依頼する?メリット・デメリットと費用比較
相続登記は自分で行うことも可能ですが、手続きの複雑さや時間的制約を考えると専門家への依頼も検討すべきです。それぞれのメリット・デメリットを比較して最適な選択をしましょう。
たとえば、相続人が多数いる場合や不動産が複数ある場合は、手続きが複雑になるため司法書士への依頼がお勧めです。一方、相続人が配偶者と子のみで不動産が1つの場合は、自分で手続きすることも可能です。
家の相続手続きにかかる費用は総額いくら?内訳を解説
不動産相続手続きには様々な費用が発生し、事前に総額を把握しておくことで資金準備ができます。ここでは主要な費用項目とその目安額について詳しく解説します。
登録免許税(登記にかかる税金)の計算方法
登録免許税は相続登記の際に必ず支払う税金で、**固定資産評価額の0.4%**が課税されます。この税額は法定されており、軽減措置はありません。
計算方法は非常にシンプルで、固定資産評価証明書に記載された評価額に0.4%を乗じた金額です。ただし、100円未満は切り捨てとなります。
具体的には、固定資産評価額が2,000万円の不動産の場合、登録免許税は8万円(2,000万円×0.4%)となります。この税額は現金で法務局に納付する必要があるため、事前に準備しておきましょう。
戸籍謄本などの書類取得費用
相続登記に必要な各種書類の取得には、それぞれ手数料がかかります。相続人の数や被相続人の転籍回数によって総額が変動しますが、一般的には2万円から5万円程度を見込んでおく必要があります。
主な書類と手数料は以下の通りです。戸籍謄本は1通450円、除籍謄本・改製原戸籍は1通750円、住民票・戸籍の附票は1通300円程度、印鑑証明書は1通300円程度です。
たとえば、被相続人が生前に3回転籍している場合、出生から死亡までの戸籍謄本を揃えるだけで3,000円程度の費用がかかります。相続人が多い場合は、さらに費用が増加することを覚悟しておきましょう。
司法書士など専門家への報酬の目安
司法書士に相続登記を依頼する場合の報酬は、案件の複雑さや不動産の価値によって変動しますが、一般的には8万円から15万円程度が相場となっています。
報酬の内訳としては、相続登記申請が5万円から10万円、戸籍謄本等の収集代行が1万円から3万円、遺産分割協議書作成が2万円から5万円程度です。
具体的には、シンプルな相続(配偶者と子が相続人、不動産1件)の場合は8万円程度、複雑な相続(相続人多数、不動産複数、遺産分割協議が難航)の場合は15万円以上になることもあります。事前に見積もりを取得して予算を確認しましょう。
相続トラブルを避けるために知っておくべきこと
不動産相続では、感情的な対立や法的な争いが発生しやすいという特徴があります。事前にトラブル回避のポイントを理解し、円満な相続手続きを進めるための知識を身につけましょう。
円満に進めるための遺産分割協議のポイント
遺産分割協議を円満に進めるためには、相続人全員が納得できる分割方法を見つけることが最も重要です。感情論ではなく、客観的な事実に基づいて話し合いを進めましょう。
重要なポイントは以下の通りです。不動産の適正な評価額を専門家に依頼して確定する、各相続人の経済状況や今後の生活設計を考慮する、被相続人の生前の意思や家族への貢献度を話し合いで共有するなどです。
たとえば、実家を長男が相続する代わりに、他の相続人には現金や有価証券で代償を支払うという代償分割を選択することで、不動産を分割せずに済み、全員が納得できる結果を得られる場合があります。
相続放棄や限定承認も選択肢に(3ヶ月の期限に注意)
相続では必ずしも財産を引き継ぐ必要はなく、借金が多い場合などは相続放棄という選択肢もあります。ただし、この手続きには厳格な期限があることを理解しておきましょう。
相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。また、限定承認という、相続した財産の範囲内でのみ借金を引き継ぐ制度もあります。
具体的には、被相続人に3,000万円の借金があり、不動産の価値が2,000万円しかない場合、相続放棄をすることで借金を引き継がずに済みます。ただし、この判断は慎重に行う必要があるため、専門家への相談をお勧めします。
困ったときの相談先は?ケース別におすすめの専門家を紹介
不動産相続手続きでは、様々な専門分野の知識が必要になるため、適切な専門家に相談することが成功の鍵となります。ケース別に最適な相談先をご紹介します。
相続登記や法的手続きについては司法書士、相続税の申告については税理士、遺産分割で争いがある場合は弁護士、不動産の評価については不動産鑑定士が専門家として挙げられます。
たとえば、相続税の申告が必要な高額な相続の場合は税理士、相続人同士で争いが生じている場合は弁護士、通常の相続登記であれば司法書士に相談するのが適切です。複数の専門家と連携することで、より確実な手続きが可能になります。
まとめ:複雑な家の相続手続きは、まず全体像の把握から始めよう
不動産の相続手続きは複雑に見えますが、正しい順序で進めれば必ず完了できます。2024年4月からの相続登記義務化により、期限内の手続き完了がより重要になりました。
最も重要なのは、全体の流れを理解してから各ステップに取り組むことです。遺言書の確認から始まり、相続人の確定、財産調査、遺産分割協議、相続登記、相続税申告まで、それぞれに期限と注意点があります。
迷ったときは専門家に相談することを躊躇せず、確実で円満な相続手続きを進めていきましょう。適切な準備と理解があれば、複雑な相続手続きも必ず乗り越えることができます。




